講師:KIPアラムナイ 環境省 鎌倉 真奈氏
2019年環境省に入省。プラスチックごみ対策の国際交渉、再生可能エネルギーと電気自動車の共同プロモーション、組織再編など幅広い業務に携わった後、渡米直前は内閣府にて原子力防災の分野に従事。
2024年秋より、米国イェール大学環境スクールの修士課程にて「ビジネスと環境」を専攻中。
【スピーチと質疑応答】
鎌倉氏には、講義の前半では主に現在Yale大学大学院留学中という立場から、トランプ政権とアイビーリーグの関係性、およびトランプ政権の策定したOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA) によるエネルギー政策の変化について概説していただいた。トランプ政権と講演中では特に、2025年4〜5月頃のハーバード大学へ要求された、反ユダヤ主義への対応(デモの封じ込め含む)、DEI(多様性施策)の廃止、数十億ドル規模の研究助成金凍結、留学生受入資格の停止等を含む諸措置が言及された。すべての発言が現実に政策として実行されるわけではないにせよ、実行に移された施策だけでも大きな影響があったことを再認識した。続いてOBBBAについて。これは税制改正、国防、国境警備、エネルギー政策等を広範に包含する大型法案である一方、スピード感を持って施行され、内容としてはバイデンのインフレ削減法 (例:EV推進)への大幅な見直しをはじめ、国内産業やエネルギー安全保障の強化、半導体関連への優遇施策が含まれるものとなった。一方、インクルーシビティや環境保全は相対的に軽視され、トランプ政権が何を優先するかが可視化されている。
講義の後半では本題となるレアアースに議論が移り、半導体や永久磁石など多様な技術領域の基盤である一方で、供給面では中国依存が色濃い現状が整理された。日本は供給先の多角化を進めており、2009年に9割前後だった対中依存を2020年には約6割程度まで引き下げているものの、重希土類の産出は依然中国へ強く依存する状況が続いている。また、埋蔵地の偏在のみならず、分離・精製等サプライチェーンの中下流における技術力でも中国が優位性を持っているという点が印象的だった。レアアースの消費面でも中国のEV産業の急伸が目覚ましく、2024年における全世界のEV新車1700万台のうち1100万台は中国で販売されている程である。しかしながら日本も、対中依存からの脱却の試みが全く見られないわけではなく、個人的に強く印象に残ったのは、大同特殊鋼による重レアアースを用いない永久磁石のR&Dの事例である。レアアース使用そのものを減らす(あるいは不要化する)技術開発に、実際に成功例が存在しているというのに驚いた。最後に、中国の再エネの急速な拡大の現状とともに、「再エネ技術はレアメタルへの依存度が高い」という問題に触れられた。
【グループ討論と全体討論】
レアアースをめぐる国際的な資源獲得競争が先鋭化する中で日本の取るべき技術戦略や国際的立場について討論した。各グループの意見を総括すると、第一に「そもそもレアアース使用量を減らす/代替する技術開発」を優先すべきだという点が共通していたように思う。単純な生産性の外からのアプローチができないかという観点からは、採掘・精製過程における労働者の人権や環境負荷(廃棄物処理等)にも配慮した調達であることを可視化し、その重要性を社会的に共有していく、という提案もあった。国際協力という面でいえば、埋蔵はあるが生産が進んでいない国への働きかけ、また産出国の国内で精製まで完結できるよう経済的・技術的支援を行う案が挙がった。自分の班でも物流コストが論点になったが、産出国側でサプライチェーンの中下流を育てる支援はその観点からも筋が良いと感じた。
【全体私感】
今回のフォーラムを通じて、サプライチェーン全体(特に分離・精製を含む中下流)で見たときの中国の影響力の大きさを、想像以上に強く感じた。私は当初中国への依存は埋蔵地の偏在に起因するものであるから、他に安定した鉱山権益を確保できれば問題は解決するのかと考えていたが、ミッドストリームでも中国が最もプレゼンスが大きく、レアアースの中国依存は根強い問題であることを認識した。しかし同時に、日本も技術開発や調達の多角化などに具体的な取り組みが積み上がりつつあることも事実である。事前に自分が調べた限りでも、日産と早稲田大学が共同研究しているレアアースリサイクル技術の例があり、講義内で紹介されていたものとしては大同特殊鋼の重レアアースを使用しない永久磁石のR&Dも挙げられる。国際協力の面でもオーストラリアから重レアアースを長期的に供給する枠組を作っている。資源面で相対的に不利な日本にとって、技術開発と国際連携が不可欠であることは疑いない。それゆえ、有限のリソースをどう配分するかという問題には国家として一層慎重に検討すべきだと痛感した。ご多忙の中、本フォーラムのために貴重な時間をいただいた鎌倉氏に深く感謝申し上げる。
東京大学理学系研究科修士1年 市川大瑚
