講師:鈴木啓太氏
Amazon株式会社、Amazon LogisticsのBusiness Analyst。
2018年 卒業研究で初めてプログラミングを学ぶ
2019年 東京大学工学部都市工学科都市計画コース修了,米国に留学
2021年 IBM入社,日本IBM コンサルティング部門AI & Analytics所属 データ解析・モデル構築などに携わる
2024年Amazon株式会社入社。 Amazon LogisticsのBusiness Analystとして現在に至る。
【スピーチと質疑応答】
今回のフォーラムでは、KIPアラムナイでありAmazon.co.jpに勤務されている鈴木啓太氏にご講演いただいた。鈴木氏は入社以来、Amazonの物流部門においてラストマイルの需要設計を担当する部署に所属し、現在は異動後、ラストマイル全チームの技術的サポートを担当されている。近年、Amazonは可能な限り自社で配送を行うサービスを開始しており、物流部門は日本のAmazonにおいて急成長している分野であるとのことであった。
講演は鈴木氏の意向により、Amazon独自の会議方式で進められた。A4用紙6枚分の資料が参加者全員に配布され、最初に資料を読む時間が設けられた後、質疑応答が行われた。資料によれば、Amazonは「顧客第一主義」「革新的発明」「長期志向」という理念を徹底し、それを支えるイノベーションを促す企業文化や人材戦略によって成長を続け、人々の買い物習慣を大きく変革してきた。一方で、市場支配力の拡大に伴い、取引先や競合他社との関係性など、社会的影響が課題として浮上していることも示された。
質疑応答では物流関連の話題が中心となった。現代日本における物流業界の人手不足や過重労働の問題と、Amazonの顧客第一主義に基づく配達時間短縮の戦略との間にある矛盾についても議論が交わされ、効率化と持続可能性の両立が重要な課題であることが改めて共有された。
【全体討論】
全体討論では講演を聞いて参加者が思ったことを一人ずつ発表し、それを起点に鈴木氏が疑問を投げかけ、討論が行われた。討論では、Amazonは顧客第一主義のもと、常に競争力のある低価格を提示することで市場を拡大してきたが、その実現を支える負担が出品者に集中している点が指摘された。特に、検索結果で上位表示されるために出品者同士が値下げ競争を強いられ、利益率が圧迫される構造が問題視された。さらに、この低価格競争が実店舗を中心とするオフライン小売に与える影響も話題に上がった。ECに対抗して価格や配送水準を引き上げざるを得ない店舗が収益を圧迫され、結果として地域の書店や個人商店などが姿を消していく可能性が指摘された。また、物流をめぐる討論では、Amazonが自動化や無人配送の実現を目指している点についても議論が及んだ。配送効率の向上や人手不足への対応策として期待される一方で、将来的にドライバーや倉庫作業員などの雇用を奪うことにつながるのではないかという懸念が示された。
【全体私感】
今回のフォーラムは、これまでに経験したことのない形式で進められ、非常に興味深いものであった。Amazonという現代を代表する企業のイノベーションを促す企業文化や思考様式の一端を体感できたと感じている。特に、資料を事前に読み込み、その内容を踏まえて議論する会議方式は、Amazonの合理性と本質を重視する姿勢を象徴しているように思われた。私は4月のフォーラムで物流について学んだ経験があったことから、本フォーラムにおいても物流に関する論点を特に難しく、かつ重要な問題として捉えた。配達の迅速化、いわゆる「時短」はもはや不可逆的な変化であり、現在は人手不足や過重労働といった課題に対処しながら、雇用も守りつつ同時に顧客が求めるスピードを満たさなければならない、極めて難しい過渡期にあると感じた。その一方で、こうした相反する課題に対して解決策を提示し得る存在もまた、Amazonのように継続的なイノベーションを追求するプラットフォーマーなのではないかと考えさせられた。今回のフォーラムは、物流を含む社会課題に対して、企業が果たし得る役割を改めて考える貴重な機会となった。
東京大学教養学部1年 香月 慈覚
