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2021年2月「Dawn of Digital Currency(デジタル通貨の夜明け)」

多田哲朗氏

略歴:2019年東京大学法学部卒業。現在は経済系官庁にて国際関係の業務に従事。在学中はKIP委員会として活動し、アメリカ研修、北京研修、そして地域研修など多くの研修にも参加。現在も事務局員としてKIPの活動に携わっている。

2月オンラインフォーラム開催。今回は、アラムナイ会員の多田哲朗氏をお招きし、デジタル通貨に関して、概念的な説明からこれまでの国際的議論、そして今後の展望などのお話をいただきました。デジタル通貨についての知識を深めたのち、ステーブルコインの一種であるリブラ(現ディエム)について、「国はリブラ(ディエム)のサービス開始を認めるべきか。また自分はサービスが開始されたら使うか。」というテーマで討論を行いました。

今回多田氏は、本フォーラムが、今後デジタル通貨の報道を見たときにより理解を深めるための視点提供の場となるよう議論を進めてくださいました。その第一歩としてまず、「デジタル通貨」とは何か、さらには「通貨」とは何か、という定義付けがなされました。その後、デジタル通貨の流れである、「暗号資産→ステーブルコイン→CBDC」のそれぞれについてその特徴、仕組み、そして問題点を、図表を交えながらわかりやすく説明してくださいました。暗号資産は通貨としてではなく、投機目的で使用される傾向が強いこと、ステーブルコインは複数の法定通貨による通貨バスケットの裏付けがあることから価値の安定性は望まれるものの、マネロン・テロ資金の温床になる可能性があり、その管理を民間企業が行うことに懸念が生じること、CBDCは国が発行するという点で他2つと異なり、一国のCBDCが他国の経済に予期せぬ影響を及ぼす可能性があることなどをお話しいただきました。

質疑応答では、各国に先立ってすでにデジタル通貨の運用が始まっている、カンボジア・バハマの例についてもご教示いただきました。先進国より先に途上国で運用が開始されていることに疑問を持った参加者も多くいましたが、これには途上国の一部では自国通貨が弱く、自国通貨の利用を促進させるためにCBDCの運用が有効であった、そして、口座は持たないがスマホは持っているという人は多くいる、などという独自の背景があることがわかりました。

これらの知識を踏まえて、後半はグループごとに「国はリブラ(ディエム)のサービス開始を認めるべきか。また自分はサービスが開始されたら使うか。」というテーマで議論を行いました。ここで、リブラとは、Facebook社が2019年に構想したステーブルコインの一種であり、ディエムとは20年12月にリブラから名称変更されたものです。各班からは、サービスを認めるメリットとして国際送金にかかる時間的・経済的コストの削減、そしてデメリットとして、経済政策の実効性の低下、マネロン・プライバシー管理を民間企業が行うことへの懸念、他のデジタル決済が浸透しつつある中での導入に対する疑問などが挙げられました。このような利点・欠点を踏まえて、あるグループではそのデメリットの多さから認めることに反対であるという結論が出され、また他のグループでは、国際送金での利点を望んで賛成である、という結論が出されました。最後に多田氏より、以上の議論に対する講評として、このような議論では、理論的な内容だけでなく、国ごとの社会の構成や人々の意見の違いに着目することも重要である点をご指摘いただきました

多田氏は、これから今後デジタル通貨の報道を見たときには、自分ならどうか、そして、市民としてだけではなく国としてはどうか、という二つの視点を区別して持つべきであるという、今までにない視点を我々に提供してくださいました。ご多忙の中、KIP会員のために貴重な時間を割いていただいた多田氏に、深く御礼申し上げます。

(早稲田大学先進理工学部2年 寺林 咲希)

瀧野俊太氏

略歴

東京生まれ。イギリスの中学・高校に通い、オックスフォード大学(哲学・政治・経済)を2018年に卒業。在学中はPresident of the Oxford University United Nations Association(2016-17)を務め、国際関係に関するディスカッションを通してオックスフォード大学と九州大学を繋げるなどして日英関係の強化活動に力を入れられた。その後、一年ほど日本のシンクタンクAsia Pacific Initiative (2018-19)で働き、2019年9月からYoung Associates Programmeのメンバーとしてパリ本部の雇用労働社会政策局で働き、現在に至る。

11月フォーラムでは、日本とフランスパリを結び、経済協力開発機構(以下OECD)でYoung Associates Programmeの一員として2年間の研修を行っていらっしゃる瀧野俊太氏を講師に迎え、「若者としてOECDで働くとはどのような経験か」、また瀧野氏がOECDで仕事とされている「メンタルヘルスのリサーチ」についてお話を伺いました。

フォーラムの前半では、「若者としてOECDで働くとはどのような経験か」、そして「メンタルヘルスのリサーチ」について瀧野氏からお話を伺いました。

まず初めに、OECDの発足から改組の歴史や現在の組織形態をご紹介頂いた上で、学生時代に日英両国を行き来していたご経験から国際機関で働くことを志望されたことや、実際に国際機関で働くには各国政府からの派遣や大学の特化したプログラムのほか、瀧野氏がメンバーでいらっしゃるYoung Associates Programmeなどの様々なパスがあることをご紹介いただきました。OECDの業務はシンクタンクに近く、各国から様々なデータを得てレポートを作成することや、日本は予算の拠出金のうち常に上位にある一方で事務員の人数は全体の5%ほどであり、英語の障壁などから現場における影響力が高くなりづらいといいます。

次に、瀧野氏がOECDで仕事とされている「メンタルヘルスのリサーチ」について解説頂きました。メンタルヘルスとは、『すべての人が自分自身の可能性を実現し、人生における通常のストレスに対処し、生産的で実りある仕事ができて、自分や自分の地域社会に貢献することができるwell-beingな状態』であるとWHOで定義されています。瀧野氏は、メンタルヘルスは精神障害の有無などに関係なくあらゆる人のものであり、どんな人であってもより良いものに出来ること、そしてメンタルヘルスについて語る際には用いる単語が重要になることを強調されました。また「精神疾患である/ない状態」と「well-beingである/ない状態」を座標軸で捉えた時、「精神疾患でない」かつ「well-beingでない」状態の人が、「well-beingである」ようにするための政策を施すことは難しいことや、肉体的な健康と比較してデータ収集や対策について遅れていることを指摘され、OECDがデータ収集を行うにあたっても、各国から得られるデータの基準が定まっていないことや、個人情報の取り扱い、アンケート回答への精神的障壁など様々な問題を伴うトピックであるとおっしゃられました。質疑応答では、コロナ禍においては人生の中で自立するための様々な準備が必要となる若い世代が特にメンタルヘルスに影響を受けやすいこと、SNSがメンタルヘルスに影響を与える可能性、メンタルヘルス改善のIT活用についても触れられました。

フォーラムの後半では、「メンタルヘルスケアにおける問題解決のためのITツール利活用」について、その可否から具体案の提示まで含めたディスカッションを行いました。アプリなどの利活用については賛成意見が多くあがり、メンタルヘルスの自覚・無自覚を問わないあらゆる人を段階的に分け、日常的な健康データ収集により自身のメンタルヘルスの変化の理由として一助となるものや、瞑想やヨガなどのソフトテクニックを教えてくれるもの、情報共有の掲示板や日記機能、医療機関へのヘルプラインを提示してくれるものなどが具体的に提案されました。瀧野氏からは、ITツール内で完結したり絶対的な判断を下したりするのではなく自助を促すことに主眼を置くべきであることや、メンタルヘルスについて理解を深める機能があれば望ましい、といったご意見を伺えました。

全体を踏まえ、瀧野氏からはこの機会にメンタルヘルスについて話すこと、考えることを続けて欲しいという言葉を頂きました。コロナ禍にある私達にとって、若い世代がメンタルヘルスへの影響を受けやすいといった話はまさに自分ごとでありながら、日常においてはメンタルヘルスという言葉についてどこか他人事に思いがちで、自身のメンタルヘルスについて無自覚でありがちであると思います。誰であっても客観的分析を通じてメンタルヘルスを改善可能であると知ることができ、そして国際機関の活動が私達の生活や向き合っている問題と地続きであることを改めて感じることができた貴重な機会となりました。時差もある中、フランスからKIP会員のために時間を割いていただいた瀧野氏にこの場をお借りして感謝申し上げます。

(慶應義塾大学経済学部4年 太田 暢)

佐藤敏郎氏

略歴

宮城県石巻市出身。 宮城教育大学卒業後、中学校の国語科教諭として宮城県内の中学校に勤務。震災で当時大川小学校6年の次女を亡くす。2013年末に「小さな命の意味を考える会」を立ち上げ、現在は、全国の学校、地方自治体、企業、団体等で講演活動を行う。

10月フォーラム開催。今年度のプロジェクトでは「伝える役割と話す責任」をテーマとし、自然災害による風評被害の予防と被害者の心理的ダメージの軽減を目指した研究を行っております。そこで、今回は大川小学校地区の語り部としても活躍されている「小さい命の意味を考える会」の佐藤敏郎氏を講師に迎え、東日本大震災で実際に起きた事実から防災において大切なことをお聞かせいただきました。

内容紹介

佐藤氏のお話では、東日本大震災で多くの尊い命が失われた事実が重く心に響いた一方で、すべての人が防災意識を高めていくことの必要性を感じました。佐藤氏が、防災とは「あの日を語ること」、「未来を語ること」、そして「ただいまを言うこと」とおっしゃっていたことが心に残っています。今回のご講演で、多くの人の命が失われるような大災害は私たちの「日常」に起きることに気づかされました。

大川小学校では、当時6年生だった佐藤氏の娘さんを含む多くの子どもたちが犠牲になりました。同学校は北上川とその支流である富士川の近くにあり、川を逆流してきた津波が避難途中の子どもたちと先生たちをのみこんでしまったのです。このとき、子どもたちは学校近くの裏山へは逃げず、避難していた校庭から川にかかる橋の方へと避難している途中だったそうです。しかし、命が救える条件として挙げられる「時間・情報・手段」の3つが、当時の大川小学校ではすべてそろっていました。実は、命を救うことができるのは、想定外の事態が起きたときの「判断」と「行動」だと佐藤氏はおっしゃっています。佐藤氏によると、想定外の場合に行う「判断」と「行動」とは、そのようなときにのみスイッチを入れる「ギア」であり、この「ギア」を動かすのは輝く命を常に想うことです。私たち一人一人の命を大切に思うことが防災へとつながるということに、私は深く納得しました。

大川小学校で起きた事実を伝えるとき、佐藤氏が大切にされていることが「命の意味づけ」です。大川小学校で起きたことは絶対に忘れてはいけないことであり、そこで失われた命から未来への意味付けをしていくことが大切だと佐藤氏はおっしゃっていました。ここで、「伝える役割と話す責任」が重要になると思いました。

大川小学校で起きたことを佐藤氏にお話しいただくと、Zoomでの開催ながら重い雰囲気に包まれました。しかし、その後のインタビュー形式でのご講演では、防災や復興において大切なことについて熱い議論ができました。「未来に起きるかもしれない災害を想定するとき、必ず自分や自分の大切な人を登場させ、成功に導いていくということが大切だ」という佐藤氏の言葉が印象に残っています。私は東日本大震災が起きた当時、小学生でしたが、大川小学校に通っていた子どもたちも同じ立場だったことに気づき、日常に起こりうる災害に対する意識がより鋭くなったように思います。今回の佐藤氏によるご講演は、「伝える役割と話す責任」につながる貴重なお話でした。プロジェクトに生かしていきます。

(慶応義塾大学理工学部2年 鈴木 百夏)

四方敬之氏

略歴

京都市出身、86年京大法卒、 ハーバード大学ケネディー行政大学院修士(MPP)。 1989年在米国日本大使館プレス担当官を皮切りに、1999年にOECD日本政府代表部一等書記官、2012年に在英国日本大使館政務担当公使、2018年からは駐中国特命全権公使、2019年には米国公使として再度米国へ赴任。国内では国際報道官、北米局北米第二課長、国際法局経済条約課長、内閣副広報官、大臣官房人事人事課長、アジア大洋州局参事官等を経て、2020年7月より現職。

今回は、本年7月外務省経済局長に就任されたKIP理事でもいらっしゃる四方敬之氏を講師に迎え、直近3年間で在中国日本大使館及びハーバード大学で研究された題材をベースに英語で研究成果をお聞かせ頂きました。FCCJにて、On-line併用という新しい試みでフォーラムを行い、質疑応答後のグループ討論では、米中対立下での日本の役割について政策提言を含む、闊達な議論が交わされました。

内容紹介

9月フォーラムは、新型コロナウイルスの影響を受け、FCCJにてOn-lineと併用という新しい形式で行いました。今回は、外務省経済局長に就任されたKIP理事でもいらっしゃる四方敬之氏を講師に迎え、直近3年間で中国や米国でのご公務及びハーバード大学で研究された題材をベースに英語で表題の研究発表の一部をお聞かせ頂きました。また、四方氏のご紹介で、中国からゲストとしてTangtang Yang氏 (シカゴ大学3年生)にも参加頂きました

まず初めに、四方氏から1970年代の米中国交正常化以来、米国がどのような対中政策及び通商戦略を講じて来たかという変遷についての概観が示され、現行のトランプ政権下の対中通商政策が、どの様なコンテクストで形成されて来たのかを簡潔にご提示頂きました。特に、中国の世界貿易機関(WTO)加盟支持を決定したクリントン政権から、環太平洋経済連携協定(TPP)を通じて高いレベルでの貿易自由化を主導したオバマ政権までとの対比から、トランプ政権における対中通商政策がいかに、従来路線から転換したかという問題意識をご紹介下さいました。この「変容」について四方氏は、現在トランプ大統領が問題視している中国の国有企業の存在や中国共産党の市場への影響力など、中国の独特な商慣行(所謂、‘China Inc.’)は、その多くが既にオバマ政権期から指摘されていた点であり、以前から金融政策や知的財産権、WTO紛争処理などの様々な方策が取られてきたが、中国が経済的に台頭する中で、当初の目標であった「市場経済国」になっていないとの認識に基づいて、諸々の未解決の課題を解決し、中国市場における米国企業にとっての参入障壁を是正するべく一連の対中強硬策が行われている為、2020年1月に米中両国間で第一段階の合意に至った現在でも、まだ楽観視は出来ないと最近までの情勢について詳細にお話し頂きました。

また、米国大統領選まで50数日を残した時点での各候補の対中観や国際通商ガバナンスの現在、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」や、フォーラム前日に大筋合意に至った日英包括的経済連携協定(EPA)、日本を含むインド太平洋地域での経済外交の動向に関しても論点整理をして頂き、現下のコロナ禍で世界経済の再興に向けて日米両国が果たし得る役割などについても解説頂きました。現在、アジア太平洋地域では、インドが交渉から抜けながらも年内締結が期待される東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓自由貿易協定(FTA)など複数の経済連携協定の枠組みが、将来的なAPECの地域レベルでの自由貿易地域の構想であるFTAAP(Free Trade Area for the Asia-Pacific)に向けて協議されています。その中で四方氏は、今後のWTO改革の重要性に加えて、トランプ政権誕生直後に米国が脱退したTPPに関して、日本を始めとするメンバー諸国が尽力して再交渉し、CPTPPとして発効させ、高い水準のルール形成を実現した点を高く評価し、その米国も巻き込む形で提唱されている「自由で開かれたインド太平洋 (FOIP) 構想」における、経済面での支柱としての可能性や将来的な米国の復帰についての見通しと、その重要性にも触れられていました。

ディスカッサントのYang氏からは、現行の米中対立について、中国側関係者の見方の解説として、米国が非難する「中国のルール違反」というのは必ずしも国際的に通用しているWTOルールではなく、米国が自国の国内法に準拠して主張していることや、中国側では巷間で言われている様な「デカップリング (米中分離)」について言及している高官はいないことが指摘されました。他方で、オバマ政権で推進されていたTPPは常に米国が主導しており、米国によって中国の様々な国内制度やルールの改革を強いられる政策手段として中国国内では警戒感をもって見られている向きもあるとの意見が述べられました。

プレゼンテーション後の質疑応答では、米中対立下で中国の更なる経済的台頭に伴う国内制度改革の兆しや「市場経済」を巡る認識の差異やその定義を巡る論争の見通し、トランプ政権の対中政策における狙い、米中両超大国以外の国々の国際経済秩序における役割など、幅広いテーマについて意見が交わされました。四方氏からは、米国で今後、国内雇用保護や国家安全保障の観点から、さらなる対中強硬的な政策が打ち出される可能性に触れながら、一方で、トランプ政権の中でも貿易政策や金融政策を担う面々によって様々な考え方もある旨説明がありました。WTO改革の文脈では、紛争処理制度における米国と欧州の考え方の違いを乗り越える重要性や途上国ステータスの見直しの必要性など、イシューによって他の関心国との国際連携や協調が不可欠であり、日本として引き続き積極的に取り組んでいきたい旨発言されました。

フォーラムの後半では、グループ討論で「米中対立下での日本の役割」について、政策提言まで含めたディスカッションを行いました。主なものとして、FCCJに参加したあるグループからは、日本は一国ではなく、価値観を共有する国々と協調して米中両国にそれぞれ働きかけるべきであり、具体的な施策として、FOIP構想の地理的射程をさらに広げてはどうかという提案がなされました。On-line参加のあるグループからは、人権や香港などの問題で中国は現在、国際社会から孤立しているが、その経済規模は無視出来ない為、ビジネス面ではこれらの問題と分けて中国が国内改革へ舵を取れる様、日本は様々なチャネルを通じて関与を継続していくべきとの見解が示されました。

これらの討論内容に対して、最後に四方氏からは、個々のグループに対して講評を頂きました。日本の外交メッセージがFOIP構想を通じて世界へ伝播することは望ましいことであり、例えば日英EPAを大筋合意したが、EUから離脱を決めた英国にとってCPTPPへ参画することでFOIPの射程が広がり、共通の価値観を有する国々の繋がりが拡大していくことや、2019年G20大阪サミットの際に日本が提起した「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust: DFFT)」に関するイニシアチブを、米国や中国を巻き込みながら進めていくことの重要性、日中両国間におけるビジネス面での繋がりに関しては、ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授が近著で指摘する様に、長い歴史に根付いた日中両国関係を考慮すると、対立を深める米中両国に対して日本が独自に果たせる役割の可能性など、各グループの論点をさらに広げて示唆に富む視点を数多く、ご提示頂きました。

偶然にも、今回のフォーラムの数日後には、WTOのパネルが米国の中国に対する高関税を不当とする、一連の米中対立の中では初めての判断を下しました。今後の展開は一層、不透明なものとなりますが、極めてタイムリーで複雑な国際通商システムに関する内容を、包括的かつ平易にご解説頂いた素晴らしい機会となりました。ご多忙の中、KIP会員のために貴重な時間を割いて頂いた四方氏に、この場をお借りして御礼申し上げます。

(オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院博士課程 大崎 祐馬)

横井裕子氏

略歴

京都生まれ、4歳でアメリカに渡り、2003年に日本帰国。慶應義塾大学卒業後、ニューヨーク大学に留学し、国際教育修士課程において社会学、人類学、政治学、平和学など幅広い視点から教育について学ぶ。2020年に修士号を取得し、現在はニューヨーク本部の国際NGOでインターン。

8月オンラインフォーラム開催。アラムナイ会NY在住の横井裕子氏から、”Black Lives Matter”活動や白人警官による黒人男性殺害などの人種問題を中心にお話頂きました。今回は日本時間20時/ニューヨーク時間7時という時差がありながら、オンラインで日本とニューヨークを繋ぎ、フォーラムを開催することができました。フォーラムは質疑応答形式で進み、その後「SNSによる発信は規制されるべきか、自由であるべきか」というテーマで討論しました。

内容紹介

まず、差別について。横井さんによると差別的な意識は皆が持っているものであるということでした。Unconscious Biasというものは必ず存在します。差別を受けている当事者に自分の意見が間違っていると指摘されたら素直に謝り、受け入れる必要があると仰っていました。受け入れて初めて無意識の差別に気づくことができるのかもしれません。加えて言語が無意識な差別を助長している可能性についても言及されました。例えば囚人という言葉は極悪な人というイメージがついてしまいます。囚人の代わりに『有罪をうけた「人」』という表現などを使うことで人間としての人権があることを強調し、差別ではなく区別するための言葉遣いによって差別を減らせるのではないかと仰っていました。

またニューヨークに在住され、黒人の友人をお持ちの横井さんから、黒人男性が生活の上で注意すべき点が複数あることを教えていただきました。例えば夜中に人の後ろを歩いていると犯罪者と疑われるため道を変えたり、傘の持ち方に気を配ったり、ポケットに手を突っこむと銃所持が疑われるので気をつける等です。また警察に対する恐怖心があり、警察署の前をなるべく通らない道を選ぶようにしているとのことでした。白人警官による黒人男性の殺害が続いたことや、黒人男性に対する他人種からのバイアスにより黒人市民が「いつ捕まるか分からない」という恐怖に晒されている事実に衝撃を受けました。このような社会になった要因として法律、政治、歴史が深く絡んでいることを横井さんからご紹介された映画 “13TH〜憲法修正第13条〜”にも詳しく描かれております。法改正がされても形を変えて黒人が恐怖に晒される状態は今も変わらないことを実感しました。ここ数年、人種差別問題は解決されつつあるのではないかと考えていた私はジョージフロイド事件で衝撃を覚え、今回の横井さんのお話で全く解決されていないことを痛感しました。

最後にアジア人として何ができるかについてです。横井さん自身デモや署名に参加することにより、社会が変わったという経験をされました。また実際に今回の問題に対してアジア人も声を上げ、議論に入っている場面が多く、ただの傍観者ではなかったとおっしゃっていました。そして今回は人種差別について詳しくお話しをお聞きしましたが、社会に存在するあらゆる「差別」(ジェンダー、障がい者、LGBTQに対する差別など)にこれを機に向き合う必要があるという強いメッセージを私たち日本人に向けて発信されていました。

これらのお話しを質疑応答形式で伺った後、グループに分かれて「SNSによる発信は規制されるべきか、自由であるべきか」というテーマで議論しました。多くの班で規制すべきという意見が上がり、規制の対象は誹謗中傷やフェイクニュース、差別に関するものが出ました。中にはフェイクニュース発信者に刑罰を設けるべきという意見が出た一方、表現の自由は厳守されるべきであり、性善説でリテラシーを持って利用してもらうという対照的な意見により議論が盛り上がりました。

横井氏は最後に人々が社会の形を作っていく、主体性を持って行動すれば社会は変わると仰っていました。「批判されても一度受け入れる」。これにより、多様化の中でも人々が理解し合える世の中になるのではないかと主張されていました。本フォーラムでは日本では知り得ることのできない、アメリカでの人種差別の現状を横井氏から説明を受け、日本在住の学生にとって非常に貴重な機会となりました。時差もある中、KIP会員のためにお話しをしていただいた横井氏に感謝申し上げます。ありがとうございました。

(明治大学経営学部4年 赤澤明日香)

Sarah Strugnell氏

略歴

モナシュ大学にて日本学と微生物学を専攻。現在はオーストラリア国立大学と東京大学公共政策大学院の修士課程に在籍中。

7月オンラインフォーラム(Reading English Magazine)開催。オーストラリア国立大学と東京大学公共政策大学院の学生であるStrugnell氏をお迎えし、新型コロナウイルスが日本と豪州の観光業に与える影響について論じた英語雑誌を題材に、両国の観光業が有する特徴や、両記事の表現の違いについてお話しいただきました。後半は、「新型コロナウイルスがもたらす日本と豪州のイメージの変化」について、「ソフトパワー」の概念も用いながら、討論を行いました。

 

内容紹介

7月フォーラムは、KIPの新しいプログラムである、Reading English Magazine (REM) の第1回として開催されました。REMは、ネイティブスピーカーとともに英語雑誌を読み、ゲストの出身国や世界が抱える社会課題について議論するプログラムです。今回は、豪州からSarah Strugnell氏をお招きし、新型コロナウイルスが日本と豪州の観光業に与える影響について議論しました。題材として取り上げたのは、”The Diplomat”に掲載されている “Japan’s Campaign to Revive Virus-Hit Tourism Sector Postponed Amid Cost Controversy”と、豪州の雑誌である”The Monthly”に掲載されている”Tour de force cancellations”です。

まず初めに、Strugnell氏から両記事で論じられている内容や、日本と豪州の観光業が共有する特徴について、プレゼンテーションをしていただきました。”The Diplomat”に掲載されている記事は、SNSを通じていとも簡単に偽情報が広まり、人々の物事に対する見方や認識が変化してしまうことを論じています。新型コロナウイルスの流行する中でも、インバウンドの促進のために、日本政府が旅行費の50パーセントを負担するという偽情報が瞬時に広まりました。他方で、”The Monthly”の記事は、豪州の有名な観光地で観光業を営む人々に焦点を当てています。Strugnell氏は、両雑誌が対象とする読者やテーマの違いに着目し、2本の記事が全く異なる表現を用いていることを指摘しました。すなわち、前者が外交雑誌らしく、形式的な表現を用いているのに対し、後者は豪州の人々の生活に密着し、同国のスラングを用いています。また、Strugnell氏は、日本と豪州の二国間で、人の往来が盛んであることにも触れ、桜の季節やスポーツイベントが開催される時期の旅行、ワーキングホリデー、修学旅行、出張などを例として挙げました。そして、このように気軽に両国間を行き来できるようになったきっかけの一つとして、格安航空会社の伸張が重要な役割を果たしていると指摘されました。プレゼンテーションの後半には、ニュージーランドと豪州の新型コロナウイルス危機への対応を例に、未曽有の事態に直面した際に、政府が一貫したメッセージを発信することの重要性を主張されました。最後には、新型コロナウイルスが観光業へ与える打撃を少しでも緩和するために、中小企業を支援し、地元のものを購入するよう心がけることが大切だとお話しいただきました。

プレゼンテーション後には、質疑応答を行いました。東京五輪を開催した場合の海外の人の動きや、格安航空会社の果たす役割の重要性、日本へ留学していた間のオンライン授業の感想等、幅広いテーマについて意見が交わされました。Strugnell氏は、新型コロナウイルスが流行する中で、日本に留まることを決意した理由の一つとして、医療保険制度の充実を挙げました。そして、滞在先や留学先を選ぶ際に、食や医療など、生活環境の充実度が重要な考慮要素になると述べました。さらに話題は外国人居住者に向けた日本のニュース発信にまで発展し、日本に住む多くの外国人が英語で正確な情報を入手するのに苦労しており、中には不正確な翻訳により誤解が生じる事態もあると指摘されました。

フォーラムの後半では、参加者は2つのグループに分かれ、「新型コロナウイルスがもたらす日本と豪州のイメージの変化」についてディスカッションを行いました。あるグループは、感染症の流行を受けて、旅行者にとっては安全が最大の懸念事項となっているため、接触感染アプリの活用や、個人や少人数でのツアーが促進されるべきだと主張しました。もう一方のグループも、安全は優先されるべきだとしながらも、観光の重要な要素である人と人との繋がりも無視することはできないと指摘しました。人々は常に、人と人との交流を通じて、異なる物語や文化に触れられることを期待しており、それは旅行をするときの大きな楽しみでもあります。新型コロナウイルスの収束の見通しが立たない中では、人と人との接触は避けなければなりません。しかし、このような状況下でも、旅行者に対して「いつでも待っているよ」というメッセージを発信し続けることは大事であると主張しました。

最後に、Strugnell氏から、NewYorkerをはじめとする有名雑誌のみならず、各国や地域の雑誌を読むことは、私たちの視野を広げることに繋がるため、この取り組みを是非今後も続けてもらいたいと、お言葉をいただきました。第1回REMは新型コロナウイルスが観光業へ与える影響や、日本と豪州の二国間関係について考える、素晴らしい機会となりました。豪州への帰国を間近に控える中、KIP会員のために貴重な時間を割いていただいたStrugnell氏に、この場をお借りして御礼申し上げます。

(東京大学公共政策大学院修士1年 石野 瑠花)

藤原 亮太氏

略歴

東京工業大学で生命科学を専攻し、修士号取得後は総合商社に入社。農業関連の部署で肥料原料の購買・調達に携わる。2019年に青年海外協力隊に参加を決意し、ヨルダン北部の植物園にて、野生植物の調査・研究および教育活動に従事。新型コロナウイルスの世界的拡大を受け、2020年3月より一時帰国中。

6月オンラインフォーラム開催。今回はアラムナイ会員の藤原亮太氏から、青年海外協力隊の活動で得た経験についてお話頂きました。フォーラムは質疑応答形式で進み、その後「国は国際協力への予算を増やすべきか、減らすべきか」という観点で討論を行いました。

 

内容紹介

まず藤原氏には、青年海外協力隊に参加するに至る経緯について伺いました。藤原氏は大学に入る前から農業に興味があり、大学院では植物の栄養欠乏メカニズムについて研究されていました。またかねてより国際協力に関心があり情報収集を行っていて、今回の応募に至ったそうです。社会的に安定した総合商社を辞めて青年海外協力隊となることに戸惑いもありましたが、キャリア計画や自身のキャッシュフローの計算表を作成することで将来のイメージを立て、最終的に決断に至ったそうです。青年海外協力隊は現地での生活費と住居が支給されるため、現地の人々と同程度の水準で生活する限りは身銭を切らずに活動できるのも魅力の一つです。派遣先の機関としてはヨルダンの植物園を希望されましたが、その理由としては大学院で植物を専攻していたこともあり、植物園での活動内容に興味があった点、また国連公用語のひとつであるアラビア語が学べるという点がポイントでした。隊員の中には環境の変化や人間関係によるストレスなどに耐えきれず帰国してしまう人もいるそうです。藤原氏は前職で海外企業を相手に営業や交渉を行っており、その経験がヨルダンの人々と良好な関係性を築くことにも活きたそうです。

実際にヨルダンで生活をして驚いたこととして、ヨルダン人の東アジア人に対する反応が挙げられました。ヨルダン国内では日本人より中国人の方が圧倒的に多く、第一印象で中国人だと思われることが多いそうです。ヨルダンでの活動を通して、宗教や価値観の違いを乗り越えながら仕事を進めることの面白さを感じると共に、国際協力や異文化理解は大変エネルギーの必要な作業だということを実感されたそうです。

藤原氏は隊員として活動する中で国際協力に対する考え方が変わり、国際協力を直接の専門とするのではなく、他分野の専門性を磨くことでも国際協力の世界で活躍できるなど、様々なキャリアパスの可能性を感じることができたと仰いました。藤原氏の仕事の一つはヨルダンの野生植物の調査と収集で、修士号や博士号を持つ職員の方と共に同じ目的を持って専門的な業務を行っていたそうです。ところが新型コロナウイルスが周辺地域で蔓延し、ヨルダン国内でも感染者が現れたことから、ヨルダンで活動する隊員は帰国することとなり、もどかしさや無力感を覚えたとも仰いました。青年海外協力隊は2年間の任期の中で国際協力の現場を知ることができるのが良い点ですが、個人のスキルや専門性によって仕事は違ってくると藤原氏は指摘されました。青年海外協力隊が現地に根付いた草の根レベルの活動を行いますが、2年間の任期の中で効果的な支援を実現するためには現地の人々とのコミュニケーションが必要不可欠です。

ここまでのお話をふまえて、グループに分かれて「コロナで自国中心主義の風潮が高まる中、日本は国際協力への予算を増やすべきか、減らすべきか」というテーマで討論を行いました。多くの班で、予算の使い道を見直して無駄を削減し金額を増やすまたは維持すべきという意見があった一方で、日本国内で経済的に余裕がない中では国際協力への予算を減らすのが妥当という意見もありました。討論の中ではコロナウイルスによる経済停滞を鑑み、額面を維持することは難しいという点も指摘され、経済の規模によってGDPに占める予算の割合を定める方法や、ポストコロナ時代の技術協力のあり方などの可能性にも言及がありました。藤原氏はまとめとして、持続可能性という視点を以って国際協力を続けていくことが、行政としても、国際協力に携わる個人としても重要だという点を指摘されました。またデジタルトランスフォーメーションやFinTechなど、テクノロジーの発展に伴う新しい国際協力の可能性についてもご指摘頂きました。

藤原氏はご自身の経験から、国際協力の現状や重要な論点などについて説明してくださり、本フォーラムは私たちが国際協力とどう関わることができるかについて考える貴重な機会となりました。この場を借りて、お忙しい中KIP会員のために時間を割いてくださった藤原氏に感謝申し上げます。

(東京大学大学院学際情報学府 修士1年 坂東 力)

5月オンラインフォーラム開催。今回は、アラムナイ会員の今井哲氏から「緊急事態宣言解除後の人の移動の在り方」についてお話頂き、テレワークやオンライン講義が導入されていく中で、今後国内でヒトの移動がどのように変化するのかを議論しました。加えて、「どうすれば地方にヒトの移動を継続的に促すことができるか?」という観点から、過疎化が進む4県へのヒトの移動企画を立てるワークショップを行いました。

 

内容紹介

まず今井氏は、”with corona”/”after corona”の世界にて、主に国内におけるヒトの移動を考えるうえで、ウイルスとの共生、生活者のマインドセットの変化、移動形態の変化が重要なポイントになると指摘されました。感染リスクの拡大により、ウイルス対策は長期戦となり、”with corona”を避けられない時代を迎えています。そこで、日常生活において人との接触を減らす取り組みが行われ、サービスや仕事、学業においてオンライン化が急速に浸透しつつあります。一方、このような変化は、私たちにリアルならではの意味を再認識させる効果を持っています。実際、自粛期間中、プライベートな時間、及び対面型コミュニケーションの持つ意義を実感した人は多かったそうです。そうすると、移動形態も、日常的な外出から、ローカル観光やレジャー体験など、目的意識がより明確な旅行へとシフトしていきます。結果的には、移動総量は全体として減少する一方、都会にいなくても生活に必要な情報が入手できるため、働き方や居住環境が多様化していきます。そうなると、特にコロナ終息後は地方・郊外へのヒトの移動が進むとのことでした。

次に、今井氏の発表を受けて、オンライン化で地方へのヒトの移動が進むのか、という点を中心に意見交換をしました。賛同された方々の見方は、仕事の効率化によりワーク・ライフの分離が進行し、半定住(weekend houseの設置など)を求める形でIターン現象が起こるというものでした。これに対して、オンライン化が進展しても、通信インフラや医療体制、移動費用を改善しない限り、地方への移動・定住を促すのは難しいという反対意見があがりました。また、国内での移動を議論する前提として、出入国者の増減をはじめ、国際情勢を考慮する必要があるという見解もありました。

こうした議論を踏まえ、過疎化が著しい秋田・福島・三重・山口の4県に関して、人の移動を継続的に促すための企画立案を、グループに分かれて行いました。ワークショップ形式での討論は、KIPフォーラムとしては初めての取り組みでした。短い検討時間の中で、どの班も、県の地理的特徴や産業構造を踏まえ、観光振興のみならず、企業誘致や国内留学の促進などを通して、リピーターを増やす画期的なプランを練っていました。

そして、各班の発表後、地域の歴史や伝統を尊重しつつ、時代状況に即応した新しいシステムを導入していく方法を全体で議論しました。企業・行政・地域住民など、様々なアクターからなるコミュニティ内での信頼関係を構築したうえで、新旧のバランスをとり、多くの人にとって地方がより魅力的な場所になるような地方改革を進めていく必要があるという話になりました。

かつてオルテガは、『大衆の反逆』の中で、”Together and alone”という概念を持ち出しました。これは、大衆社会に生きる中で、自身の道を見失ってはならないということを指しています。今回のフォーラムを通して、むしろ”Alone and together”という発想を抱くのが大切ではないかと私は考えました。1人1人が、自分と向き合う時間を作り、現状・将来について真剣に考える。同時に、様々な社会変化・社会問題に対して他者と手を携えて取り組んでいく。今私たちには、こうした姿勢が求められているのではないかと思いました。

最後になりますが、お忙しい中、完成度の高いスライドを用いて、今後の展開を力説して下さった今井氏、および有意義な討論の場を設けてくださった委員会の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

(東京大学法学部3年 川上 晴紀)

4月オンラインフォーラムは、以下のような三部構成で行われました。

  • 第一部:海外在住KIP会員からの各国新型コロナウィルス対策についての生の声
  • 第二部:A遠隔大学授業、Bリスクコミュニケーション、C公衆衛生と政治経済、の3グループ討論
  • 第三部:各グループの発表と全体討論

本稿では、第二部において各グループのファシリテーターの独自の進め方に基づいて行われた討論のまとめを抜粋してお伝えします。第一部:海外からの生の声(イタリア・アメリカ合衆国カリフォルニア州・アメリカ合衆国ニューヨーク市・ヨルダン)は、コチラをご覧ください。

Aグループ「感染症流行下の遠隔大学授業」

討論テーマ:
「オンライン授業は授業のあり方としての新たな選択肢となりうるか」
はい、なりうる。しかし大学教育をはじめとした教育現場において、100%オンラインに切り替えることは不可能だと考える。オンラインの強みとオフラインの強み両方のいいとこ取りをすることが、アフターコロナの世界において現実的な教育現場におけるソリューションとなるだろう。

Bグループ「リスクコミュニケーションのあり方」

討論テーマ:
「緊急事態において、社会的影響の大きいトピックにおける情報発信はどうあるべきか?」
対象を、リーダーと国民・市民の二つに分けて考える。

B1グループ
<リーダーに必要な情報発信の形>
a. 危機感を煽る方法
b. 安心を生む方法
これら2つの方法から、国民の心理状況に応じた対応が求められるだろう。また、総じて近い過去の経験を効果的に参照させられるリーダーが求められると考える。

<国民・市民のリスクコミュニケーションにおける役割>
信頼に値するサイトから発信される正しい情報にアンテナを張り、自主的に情報を取り、発信すべきである。また、コロナという問題に対して時間空間軸を大きく持ち、情報を受容することが行動変革につながるだろう。

B2グループ
<リーダーに必要な情報発信の形>
情報が錯綜し、何が正しくどういった行動が必要か不透明だった福島原発事故のときと異なり、とるべき行動が明確であると判断する(※)。これを然るべき政府やメディアというステークホルダーが適切に自分ごととして認知させることが重要ではないだろうか。

(※)福島の風評被害は「福島の農産物が安全なのかわからないと、購入・摂取ができない」という、「ファクトチェックがないと行動ができない」事例であったため、「福島の農産物を買う」という行動に結びつけるために原因の正しい理解を求めつつ、反感を買わないような非常に丁寧なコミュニケーションが求められたが、今回のコロナは「コロナがどういう病気なのかとかはよくわからないけど、何れにせよ3密をさけて家でおとなしくすること」という、「原因がどうあれ、取るべき行動は明確」という点で大きく異なる。

<国民・市民のリスクコミュニケーションにおける役割>
選りすぐりの方法として有効だと考えるのは、自分のみで判断せず身近にいる人と、雑談程度のレベルから議論を行うこと。議論を経ることでフェイクニュースなどを切り捨てることが可能になるだろう。
自分も発信者であるという自覚を持つことが重要であると考える。正しい情報がより多くの人の目に触れるように努力し、SNSなどを活用することも有効であるはずだ。
→想像力と信頼を社会的につくる主体が「私たち」であるように行動すべきだ。

Cグループ「生命と生活の防衛:公衆衛生と経済・政治」

討論テーマ:
「若者のグループとして、我々なら地元の政治家に何を陳情するか?」

C1グループ
Who:社会の中で問題を抱えている人たち

    1. 接客業、飲食店のオーナーや従業員たち
    2. 子育てしながら勤務している人たち
    3. 「肩たたき」に対する不安を持っている人たち
    4. アート系で生計を立てている方
    5. Social worker 例) care giver
    6. 就職や転職を考えていた人たち

What:陳情したい内容
短期的:現場の声を聞き、共感と共鳴を受けながら、現状と先行きを明確に共有すること。(∵NY州知事の人気の高さ)
長期的:意識の問題で解決に向かっていなかったが、今回で顕在化した問題への積極的な対応。例えば、人種差別、DV、システムのオンライン化など。 若者としては、DV保護システムや、飲食店の先払いシステムなどに関与するなど、できる形で解決の一端となりたい。

C2グループ

医療費制度の見直し
対面では、患者が3割負担、国が7割負担だが、オンライン診療ではこの対面報酬が認められていない。従来の制度が残っている可能性がある。
若者がチャンスを得る機会を国が奪わないことを切望。
失業者、金銭不足、新入生、留学予定者はチャンスを奪われていると考える。
a. 教育関連機関に対して、留学制度の続行、奨学金給付の継続を要求したい。
b. 入学時期、卒業時期をもう少し柔軟にする方法もあるのではないか。

(KIP委員会)