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2014年2月「国際ビジネスの現場と、そこで通用する日本人への道」

今回のフォーラムでは、国際ビジネスに通用する日本人像についてのお話を聞けた。登壇者は安田様である。

21世紀からのグローバル化に伴い、世界のビジネスはさらに国際性を増した。英語の公用語化や多様なネットワークの急速な普及は、国際社会のあり方を大きく変えつつある。日本人は、その大きな変動の波に乗り切れているだろうか。答えは否である。

現在の日本社会は、依然として国際的なつながりが希薄だ。政府や企業の単位でしか国際的な交流を進められず、個人単位の交流は浸透していない。私達、日本人には個人感覚で世界の動向を認知する機会が極端に少ないのだ。英文法を学ぶも英会話ができない日本人。単一の言語や文化に依存した生活様式。これらの出来事は、日本がいずれ国際社会に取り残される懸念を示している。

日本人が国際ビジネスに通用するためには、個人単位の国際的な交流が欠かせない。英会話や様々な文化に触れることが必要なのだ。国際的な交流を通して、自分が世界の一員であることのアイデンティティを形成する。自分は日本人でもあり、国際社会の一員でもあるのだ。日本人という同じ枠組みの中でなく、国際社会における他者との比較の中で、再度自分を見つめ直す時がきている。

フォーラムの中で、もう一つ印象的だった言葉がある。それは国際ビジネスに通用するためには、個人としての人間性が欠かせないということだ。効果的なリーダーシップを発揮するには、意見調整能力だけでなく、人間的な魅力が必要である。高い能力があっても、人がついてこなければリーダーとは言えない。

私は人間的な魅力を、人の良心に訴えかける力だと考えている。国際ビジネスを歩めば、価値観や意見が異なる人々と多く出会うだろう。その中でリーダーシップを発揮させるためには、何よりも説得力が大切だ。正しい目的を理解し、周囲に正当性を熟知させる。それは多様な人々を率いるために必要不可欠な能力でもある。

価値観や歴史認識が異なる人々と相互理解を深めるには、彼らの心を掴むことが大切だ。私は言語や文化、価値観が違えども、人としての良心だけは世界共通だと考えている。価値観や歴史認識に訴えることも時として必要だが、枝葉だけでなくその人の「根幹」に訴えることも同様に重要なのではないか。理論と心で周囲を魅了し、新たな分野を切り開くリーダー。そのようなリーダー像こそが、今後の国際ビジネスの場で求められているのではないか。(渡辺潤)

11月フォーラム開催。素粒子物理学者の村山教授をお迎えし、「わたしたちはどこから来たのか」というテーマの下、原子や素粒子、暗黒物質について、そして最近話題になったヒッグス粒子の話も交えながら素粒子物理学が追い求める最新の”世界の成り立ち”についてご講演いただきました。

はじめに重金属元素の起源としての恒星とそこでの反応である核融合反応の話、そこで生まれる陽電子やニュートリノ、恒星の集団である銀河の引力を担うダークマター、そして新しく観測されたヒッグス粒子と、身近な話題からスタートしてどんどんとミクロの世界の奥地へと踏み込んでいく過程はまさに心躍るものでした。物理に興味のある学生はもちろん、これまであまり知識のなかった学生にとっても分かりやすく、科学への興味が沸いたという感想が多く寄せられました。

特に一理系学生、それも今後科学と社会との橋渡しの役割を担う可能性が高い私にとって、今回のレクチャーはとても示唆的であったように思われます。村山先生はそのお話の中で非常に多様な比喩やジョークを用いられており、それらが本来ならば難解な話題に明快なイメージと軽快なテンポを付け加えていました。専門的な言葉で事実をそのまま語るのでもなく、かといって本質を損なってしまうのでもなく、そうしたサイエンスコミュニケーションの本質はやはり聴衆を理解し、何を優先して伝えるべきなのかを考えた上で話すということが必要なのでしょう。講義後のディスカッションでは「科学予算を誰が、どのように配分すべきか」という議題について話し合いましたが、そこでもやはり科学に携わる人間がいかに自分たちの研究を社会へ発信するか、ということの重要性が浮かび上がっていました。(遠藤彰)

10月フォーラム開催。今回はNHK論説委員長や、外務省外務報道官、(株)日本国際放送の社長などを務められた高島肇久様をお迎えした。テーマは、日本の対外情報発信力。日本は諸外国に対し十分な発信をしているか、またその発信力はいかなるものか、などについてお話しいただいた。

異なる文化背景を持った人々に対して、自らのメッセージを正確に受け取ってもらえるのだろうか。講演を通して感じたことは、情報を受信する側がまず耳を傾けてもらわなければならないという点である。そのためにも、情報発信をする際には、伝える場のルールや文化を尊重し従うことの重要性である。たとえば、講演で取り上げられたIOC総会の場においては、謙虚なプレゼンは大きなプラスを生むとはいえない。なぜなら、IOCで共有されているルールや文化とは、ヨーロッパ的な価値観が中心となっているためである。そのため、ボディランゲージを使い活発で堂々としたスピーチが求められている。また、使用する言語についても挙げられる。IOC総会では、英語に加えて仏語のプレゼンに効果があった。それは、聞き手に対し、発信者の思いが直接伝わるからであろう。言葉の得手不得手が問題となるのではない。言葉を通して、自らの思いを伝えようとする気持ちがあれば、受けては身を乗り出して親身に聞いてくれるだろう。

そのうえで対外とは、必ずしも外国人に対する発信に限らないといえる。日本国内においても、上記に関するルールの認識は必要とされるためである。欧米に比べると、日本国内では謙虚さが大事にされていると考えられている。にもかかわらず、なりふり構わずに謙虚さを捨ててプレゼンをすることは、場合によっては聴衆の反感を買ってしまうだろう。そのため、それゆえ日本においては、謙虚さを重んじる情報発信がいまでも重視されていることを忘れてはならない。(中道洋司)

8月フォーラム開催。今回はYaleDartmouthの大学生とともに現在進行中のグローカリゼーションプロジェクトの一環として、日本とアメリカでの「地」に対する言葉の認識を比較し、「地方」の活性化に向けた理想的な方法について議論しました。

前半では日本人グループと米国人グループに分かれ、「地」という言葉から連想されるものをそれぞれのグループ内で挙げていきました。そこから見えた違いの一つはアメリカ人の場合「地」という言葉に対して大都会から田舎まで幅広いイメージを持つ一方、日本人の場合「地方」など、都会とは離れた場所を連想することです。大きく共通していた点はやはり自分達が思い浮かべる「地」に対する強い所属意識でした。さらに両国の学生を交えた4グループに分かれ、この違いについてグループ内で掘り下げて行きました。興味深かったことはアメリカ人の場合自分達が思い描く「地」に対して全員が大変強いプライドを持っていることです。彼らがイメージする「地」とは、自分の生まれ故郷ないし地元であるからという単純な理由ではなく、その「地」が自分達を定義付けるものであるという理由から彼らのアイデンティティに対する意識の強さを感じました。

後半では同じグループ内で地方の活性化に向けた理想的な方法を話し合いました。どのグループも地方の特性を保つという点では共通していましたが具体的な方法としては多種多様な意見が挙がりました。地方独自の伝統産業、特産物、観光地のPRによって土地のブランディングを促進し人口の流動性や経済の安定を図るという意見が主にありました。学生と関連深い内容として、教育による“globalization without urbanization”という意見が出ました。その方法とは地方に大学を建設し、多くの若者を呼び込むことで様々なバックグラウンドを持つ彼らと現地の学生や地元の人々との交流を促進し、グローバルマインドを構築させるというものでした。これはDartmouth大学があるハノーバー市のような「カレッジタウン」(大学が地元を定義付ける町)と関連した貴重な意見だと感じました。 (中 太一)

KIP7月フォーラム開催。カナダ大使館商務担当参事官・オンタリオ州政府駐日代表であられるRobert A. Ulmer (アルマー) 様に、「A Different Way of Looking at the World」と題して、ご自身の経験をもとに、現代のグローバル化において様々な視点を知ることの大切さをお話していただきました。

学生時代に英文学を専攻し、来日したのち日本文学を勉強し、梶井基次郎の「檸檬」の英語訳を出版し、後にJETRO, 日本・カナダの金融界、そして現在はカナダ大使館商務担当参事官・オンタリオ州政府駐日代表をしていらっしゃるUlmer氏は、その豊富な経験から「縁」を感じることの重要性を教えてくださいました。そして、この「縁」の存在を知るためには、さまざまな事柄に目を向け、多様な視点を探る姿勢が大切であると教えてくださいました。

フォーラム最後のグループ討論では、「何がわたしたちを、異なる視点を知ることから遠ざけているのか」という質問に対する答えを話し合いました。日本文化に見られる「出る杭は打たれる」、「道をはずすと正しい道に戻りづらくなる」という風潮が挙げられたり、理由を探るのではなく、さまざまな視点を知るためにはどのような行動が必要であるのかが発表されたりしました。

ロバート教授が講義の中で何度も繰り返されていた縁という言葉は、人の想像力がつながることなのかなと考えました。それは自分が日常で触れている情報や、価値観であると考えるため、やはり、さまざまなことに興味を示し、知ることはとても大切であると感じました。(高野真実)

6月フォーラム開催。日本銀行国際局審議役で活躍されている櫻庭千尋様に、「国際会議の運営―対外交渉の進め方」をタイトルとして、トルコ債務危機への対応に関するG7でのご自身の経験もまぜつつ国際会議の取り組み方と、対外交渉をしていく中で大事なことをお話していただきました。

最初にその当時のトルコの経済状態がどのようであったかについて説明していただき、G7の各国の思惑の違いや対応の仕方の違い、国際通貨基金(IMF)の特徴などをお話していただきました。

そして「本質を見抜く力」、「先入観を持ってはいけない」ということの重要性、そして説得力はどのようにしたら得られるか、ということを教えていただきました。

最後にグループ討議として日中韓の通貨スワップに関するケーススタディーを行いました。各チームともそれぞれ違った視点からの結論を出していました。

今回ケーススタディーで学んだことは、ほかのチームとの違いをはっきりと示すことと、メインポイントをしっかりと一つだけにしぼること。この二つの重要性を強く感じました。また国際会議の場では適応力、柔軟性、そして本質がなんであるかを見抜く力が必ず必要であるということを感じ、このような力をつけていきたいと思いました。
(長谷川駿)

第三回NanoJapan+KIP合同討論会ということで、ナノジャパン学生とKIP学生さらに伊藤公平理事を交えて、Should all students be required to study Liberal Arts, instead of taking professional education? 学生は専門課程を学ぶより、教養課程をやるべきか、というテーマについて議論しました。

このテーマは昨年度のKIPのプロジェクトを通して見えてきた、企業が学生に求めている教養の重要性を踏まえたものです。

今回はNanoJapanの来日学生と、KIP学生がそれぞれ半数程度で1グループとなり、英語でのディスカッションを行いました。全4グループ中、先のテーマに対する結論がYesのグループが3つ、Noが1つとなりました。Yesの理由として、専門だけでなく幅広い知見を持つため、たとえ一つの学問を究めると決めていてもバランス感覚を養うためなど、一方Noの理由では、大学では高度な専門的教育を施すべきであり、高校までで充分であるなどが挙がりました。質疑応答では、アメリカのboarding school、大学へ通われた伊藤理事の体験談も含め、机上で学ぶ学問だけなく、寮生活や課外活動といった大学という場を介して私たち学生が行うあらゆることがリベラルアーツ教育であるという新しい視点にも出会いました。

日本では大抵の場合、学年が上がるごとにリベラルアーツ教育が徐々に専門教育に置き換わるのに対し、アメリカでは4年を通して一定の割合で行われるというリベラルアーツ制度そのもの違いとそこから生じる認識の差をが浮き彫りになりました。NanoJapanの学生は皆が理系であるにもかかわらず、大半の人がリベラルアーツ教育を受けており、それを面白いと感じ、重要だと理解しており、むしろ理系だからこそすべての根幹を疑い、深く考える学問である哲学を学んでいるという学生もいました。

またディスカッション中、それ自体がよいか悪いかというのは別にして、彼らの自分の意見を言おうとする積極的な姿勢、たとえば誰か話している途中でも「それってどういうこと?」と質問を投げかける場面に何度も出くわし、欧米のディスカッションスタイルを肌で感じ、もっと自分も積極的になっていこうと思いました。
(河上友紀)

4月フォーラム開催。今回のフォーラムでは、衆議院議員外務大臣政務官の城内実様にお越しいただき、政治と外交をお話しいただきましたが、ご自身の経験をもとに「生きていく中で大切なものは何か」というテーマを中心にお話していただきました。

外交官、衆議院議員など様々な役職を経たご自身の経験から、グローバル化が進む昨今の情勢の中で、中国やアメリカなど他の国と交渉するときに、私たち日本人が「日本人である」というアイデンティティを持つことの必要性を強調されました。そしてそのアイデンティティの2つの軸となるものが、日本語であり、日本の歴史であるという点は非常に興味のあることだったと思います。西洋の価値観を押し付けられ、影響をうけてしまいがちな日本ですが、改めて私たちは日本という国について正しく知り、学び直さなくてはならないと再認識させられました。

また、城内様は自身の落選の経験から、一つの見方ではなく、多様な視点から物事を見ることの大切さについて学ばれたそうで、私達にも教えて下さいました。相手の立場や第三者の立場から物事を捉えることで、物事の本質を見ることができます。人やメディアから伝え聞いた情報だけではなく、自分自身で調べ、考えた上で物事の本質を見きわめることこそ、変化の早い今の時代を生きる中で必要なことであるとわかります。そのためには様々な価値観を持ち、変化に即座に対応できるように、自頭を鍛えることが重要であると実感いたしました。

その後の学生のみのディスカッションでは、日本の外交政策として、移民政策を日本が取り入れるべきかというテーマで話し合いました。ここでは、城内議員からいただいたお話を踏まえて様々な視点からこのテーマについて議論することができたのではないかと思います。 移民側の立場に立って議論したり、移民政策を受け入れることによる人権の問題や日本の労働人口の減少と移民問題の関係など様々な切り口から話し合い、有意義な時間を持つことが出来ました。(野原崇稔)