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2016年2月「知らんぷりからの脱却」源飛輝氏 KIPアラムナイ

2015年12月「今後の日本社会におけるグローバル人材育成のあり方」

12月フォーラム開催。今回は、1986年に外務省に入省なさり、北米第二課長、国際法局経済条約課長、内閣副広報官、英国公使などを歴任された後に、2014年7月より外務省大臣官房人事課長を務めてらっしゃる四方敬之氏をお招きし、“今後の日本社会におけるグローバル人材育成のあり方”というタイトルでご講演して頂きました。KIPの理事をも務めて下さっている四方氏は、KIPが政治問題をいかに先取りして扱っているかということ、そしてそこから発展して大学が本来どのような役割を担うべきかということの中で特に英語教育に焦点を当てて、実りあるお話をして下さいました。

前半では、政治界の第一線でご活躍なさっている四方様だからこそご存知の、日米やその他太平洋沿岸諸国をめぐる経済協定の変遷、それら各国の思惑について具体的に解説して下さいました。現在議論が活発になっているTPPですが、実はKIPでは世間で注目される以前からTPPのシミュレーションがなされていたそうです。政治家でなくとも、私達が生活と強く結びついている公共政策に関して考えることは必須ですが、KIPで深く議論する場を頂けることがいかに恵まれているかを実感しました。一方で、大学では次の社会への自分の立ち位置を考える機会が十分に提供されているのかという問題を四方氏は提起なさいました。今日の日本の大学では早期に専攻を決める形式が一般的で高校生の時点で文系か理系かを既に選ぶ者も少なくないが、海外で重視されているのはwell-roundedな人材である中、日本で高校や大学で文理を分けるのはそもそも必要ないのではないかというご指摘はもっともだと思いました。というのも、私自身高校生のときに文理の選択をしなければならないことに違和感を抱いていたためです。また、海外経験の豊富な四方氏は現在のlingua franca(共通言語)である英語が国際舞台でどんなに重要であるか、そして日本人が英語での表現力不足のためにいかに損しているかを説かれました。日本が世界の中で生き延びていくために社会全体の英語のレベルをどのように上げるか。この根本的な問に、四方氏が比較なさっていた英語力を測るいくつかの指標(TOEFL,TOEIC,PTEなど)について考慮しつつ、まっすぐ向き合って参ろうと思いました。

後半では、今回のフォーラムテーマに即して「大学教育では実学と教養のどちらをより重視するべきか」という議題についてグループディスカッションを行いました。今回の議題に関しては、そもそも「実学」や「教養」が具体的に何を指すのかが曖昧であるために、初めに定義付けを行ったグループが大半でした。ただ、グループごとにその定義が細かいところでは違いがあるとはいえ、何を専攻するにしても後々その他の分野の知識が役立つことが多いので「教養」をより重視すべきとの方向性は一致していました。また、そのための具体策として大学での単位制をなくすのが良いというものなど未来志向の提案をしたグループもありました。ディスカッションに参加した全員にとって身近な話題であるだけに、活発な意見交換が行われました。お忙しい中講演のためのお時間をとって下さった四方氏に、この場をお借りして感謝の意を述べさせて頂きます。ありがとうございました。(藤﨑照世)

11月フォーラム開催。今回は、2012年までアメリカ駐米特命全権大使を務められ、退官後現在は上智大学特別招聘教授・国際戦略顧問、一般社団法人日米協会会長など幅広くご活躍なさっている藤崎一郎様をお招きし、“前駐米特命全権大使、世界観を語る―グローバリズムの落とし穴―”というタイトルで、ご講演を頂きました。グローバリズムの誤解や、大使のご経験からアメリカ大使はどのような役割を担っているか、また、日本人として海外へ出たときに知っておくべきことは何かなど、貴重なお話を伺いました。

前半では、日本とアメリカに関する外交クイズをした後、「グローバリズムの落とし穴」という題で大きく3つのカテゴリーに分け、“国”“発信”“語学”に関してお話をしていただきました。海外へ出たとき、日本のことを知らないのは恥ずかしいと海外へ出ることに臆する日本人が多いですが、藤崎氏は次の4点についての知識と意見を持っていれば良いのだと教えてくださいました。1つ目は東日本大震災の復興への知識、2つ目は原発への知識と意見、3つ目は地球温暖化、4つ目は難民です。国を超えて異文化の人々と関わるには、自国の情勢について知ることと、国際的関心を高めることが重要であると感じました。また、“発信“だけが重視され、自分の話をしてしまいがちな日本人が多く、一方的な“発信”に偏ってしまう傾向にあります。一方、藤崎氏は“受信”の大切さも強調していらっしゃいました。海外では家族の写真をオフィスの机に飾ってあるなど、相手の情報を聞き出す手がかりを見つけることがコツだとおっしゃっていました。これからのグローバル社会で生き抜く日本人に求められていることは、受信しながら発信していくことであるとわかりました。

後半では、今話題のテーマである「復興・地震対策が進まないのにオリンピックに力を注ぐべきなのか」また「日本はさらに軍事的役割を世界的に果たしていくべきか」という内容でグループディスカッションを行いました。オリンピックがもたらす経済効果は期待できますが、関心事がオリンピックに偏り、“被災地離れ”になってしまわないためにもメディアによる関心も必要であるという意見が出た一方、今も仮設住宅で暮らしている方々を無料で競技会場に招待するなど、グループによって様々な捉え方がありました。もう一つのテーマに関しては、軍事的役割を果たすことで国際的なプレゼンス・発言権を高められるという賛成派がいた一方で、それは現在の世界のトレンドから外れており反発を招くという反対派もおり、結論には至りませんでした。どちらのテーマも今日本が抱える重要な話題であったため、非常に活発な討論となりました。お忙しい中、お時間を割いて講演にいらして下さった藤崎様に感謝の辞をお送りいたします。ありがとうございました。(髙橋愛美)

10月フォーラム開催。今回は日本でも有名な韓国の酒造会社JINROの社長であり、日韓交流のため活動されている楊仁集(YANG IN JIP)様に“JINRO経営と日韓関係”をご講演いただきました。一企業の代表者として、JINROがどのように日本でシェアを伸ばしていったのか、また一民間人として、日韓関係が良い方向に向かうにはどうすればいいかなどのお話をいただきました。

若者の酒離れが進む中、JINROは楊氏が社長に就任されて以来、経営改革により日本国内での売り上げを伸ばし、現在日本の酒類業界でトップ10に入る唯一の外国企業にまで成長しました。楊氏が一番自信を持っておっしゃっていたことは、JINROが日本の現地化に他のどの外国企業よりも成功したということであり、自国流を押し付けるのではなくその国の流儀に合わせるというこの姿勢は日韓関係の改善にもつながることでした。楊氏の経営改革のひとつに“常に強調すること”として定めたいくつかの標語がありました。“「前例がない」とはおさらば”などのこの標語は、楊氏の声や醸し出す雰囲気もあいまって、大変な深みをもって私のなかに入ってきました。

日韓関係改善のために活動されている楊氏ですが実は韓国独立運動家の孫で、親戚には反日感情の強い方が多いそうです。しかし楊氏は、そんな出生だからこそ歩み寄っていくための活動をしているのだと熱く語ってくださいました。若者は未来を造っていく存在であるから、視野も心も広く外向きであれという楊氏の言葉は、確かに領土問題などを日本本位で考えがちであった私に強くささりました。

グループディスカッションでは、各グループがそれぞれ今回の講演に関係するテーマを決めて話し合いました。世論を日韓関係改善の方向にもっていくためには相手側の主張を皆がしっかり知ること、そのために教育をしっかりしようという班や、日韓関係改善のために合同の歴史の教科書や授業を設けようとする班などがありました。日韓関係については色々な人が色々なことを考えているので、斬新で効果的なアイデアを出すのに皆切磋琢磨していました。こうして各々が日韓関係改善のための一歩を考えることで、その難しさや現状に対する理解が深まる、大変貴重なフォーラムでした。お忙しいお時間を割いていらして下さった楊氏にはもう一度感謝の辞をお送りいたします。ありがとうございました。(古屋沢彌)

第三回特別セミナーフォーラム開催。6月、7月に引き続き、元朝日新聞論説主幹で、その後日韓の大学の客員教授などもされている日本国際交流センターシニアフェローの若宮啓文様にお越しいただき、日中韓、そして米国も含めた国際関係の現状と今後について考えました。

戦後70年を迎え、東アジア、世界の情勢は大きく変わろうとしています。安全保障関連法案が可決された今、隣国や同盟国との関係を再度見つめなおさなくてはいけない時が来ていると思います。今回は、事前に参加者が日本、韓国、中国、米国にわかれ三週間の事前学習ののち、各国の首脳や大臣として討論をする、という内容でした。

当日の討論は安倍談話や抗日パレードに関して各国の立場に立った主張を行ったり、疑似首脳会談を行ったりとロールプレイング形式で行われました。様々な議論を巻き起こした安倍談話ですが、実際に各国の立場から批評を行うことで、妥協と主張をうまく織り交ぜ、様々な方面に配慮をした政治的に非常に考えられたものであるということを実感しました。

各国の首脳会談では互いの強みや弱みを把握しながら、互いの主張を述べる非常に高度な議論となりました。偏に外交といっても、経済や宗教、人権問題さらには軍事面等、様々な要素を鑑みつつ交渉していくことの難しさを肌で感じました。

今回KIPメンバー各人が情報を収集し、各国の戦略を練ったことで各国の思惑や現状がより理解できたように思えます。若者である私たちにとって、今回のセミナーフォーラムは今の日本の立ち位置、そして今後日本が歩むべき道を考えるうえで非常に有意義なものとなりました。

授などもされている日本国際交流センターシニアフェローの若宮啓文様にご講演をいただきました。戦後70年を迎え日中韓の間で歴史認識への議論が再燃する中、今回は安倍談話や靖国問題に焦点を当てた内容となりました。

まず前半では、戦時中から脈々と連なる日本の内政や外交の歴史をお話しいただきました。中国・ソ連との友好関係を築こうとした石橋湛山に対し、アメリカとの関係性を重視した岸信介、再び中国に接近し日中国交正常化を実現させた田中角栄など、自民党の政治家がアジア・アメリカとどのように向き合い、日本の外交を行ってきたのか、わかりやすく説明していただきました。また、アジアの国々へ戦争による犠牲を正式に謝罪した村山談話が外交史上で果たす役割や現代における意義、安倍談話の展望と今後のアジアとの関係性などを伺い、今まさに生じているアジア外交の問題を歴史の観点から学ぶことができました。

後半では前半の講義を踏まえて、自らが首相であった場合どのような談話を発表するか、また靖国神社に参拝するか、という題でグループディスカッションが行われました。どちらの議題でも対立軸となったのは、国際関係を重視するか、国内のナショナリズムや慰霊の方々を重視するかというものでした。対立点は比較的わかりやすいものの、過去の歴史、外交史、経済、等が複雑に絡み合った問題では、お互いが納得のいくものを見つけることは難しいということを肌で感じました。歴史問題はナショナリズムが関わる繊細な問題であるうえに双方譲れない部分が多く、いかに妥協点を模索するかが今後の課題となるのではないでしょうか。

6月フォーラム開催。元NHK交響楽団常務理事の加納民夫様にご講義をして頂きました。オーケストラの語源や起源などクイズを交えて、大変興味深くご説明頂き、オーケストラのことを良く知らない私でもとてもよく理解することが出来ました。楽譜を手作業で切り貼りして演奏者の見やすい形にするライブラリアンや、指揮者やソリストのアシスタントを担うアテンダーといった仕事があることも今回初めて知ることが出来ました。こうした舞台に上がらない多くの人たちの支えがあってはじめて、一つの演奏が観客席に座る私たちに届くようになる。今まで何度も演奏を聴きに行きながら、演奏者しか見えていなかった私の未熟さを知りました。

オーケストラの経済的な収支は、そのほとんどが演奏収入で成り立っていると思っていましたが、演奏収入よりもずっと多くを行政や民間からの補助や支援で賄っていることがわかりました。ディスカッションでは、補助金の交付への賛否を議論しました。私は、幼いころおしゃれをして出かけていった演奏会の楽しかった思い出から、演奏会存続のためにも国が補助金を出すべき、と主張しました。ところが、日本を代表する伝統文化である歌舞伎や雅楽であればともかく、日本での歴史が浅くしかも日本独自のものとはいいがたいオーケストラに対して、本当に保護・育成の必要があるのか、反対派の筋の通った主張を聞いてしまうと、経済支援を受けて当然とは主張しにくく、日本のオーケストラの微妙な立場というものを痛感しました。(中岡桃子)

5月フォーラム開催。TELL (Tokyo English Life Line)の執行役員であられるIan de Stains 様にご講演いただきました。私たちの生活に欠かせなくかったインターネットは便利であると同時に人を傷つけるものにもなり得ます。そんな現代の特に若者を取りまくネット環境についてお話を伺いました。

現在インターネットは情報の取得やゲームなどの娯楽を初め、ソーシャルネットワークを通じて離れた友人、家族、恋人との連絡手段など様々に使われています。こうした便利な面がある一方で、人間を互いに遠ざけ、傷つける武器にもなり得ます。フォーラムでは初めに、「ひきこもり」というのが日本人男性特有に見られるものだというお話から、専門家の間でも意見の分かれているこの理由についてグラウンドディスカッションの形で話しあいました。そして、規制の難しいネット上でのいじめという世界共通の問題についてグループで話しあいました。

アメリカ人学生も交えた討論ではとても興味深い意見があがりました。そもそもインターネットそのものに本質的に悪いことがあるわけではない。匿名性だって必ずしも人を傷つけるものになり得るわけではないから、使う人次第なのではないかという意見がありました。また、学校に適応できなくなった人がインターネットの世界へ走り、ひきこもってしまう若者を問題視する前提での話し合いの中、アメリカでは高校中退後、薬物に手を染めたり、ギャングに入ったりする若者もいることを考えれば、むしろ良いのではないかといった意見や、社会不適合者とレッテルを貼っているけれど、インターネットのゲームの世界で仲間を見つけ、独自のコミュニティーを形成しているのだから非社交的といって問題視するべきではないのではないかという意見があがりました。さらに、このひきこもりが日本人男性特有に見られるものといったところから、日本の男性に対する文化的、社会的価値観や、家族、友達との関係性についてもアメリカと比較した話で盛り上がりました。

ネット上のいじめ問題では、人を傷つけるものにしても発言自体を規制するのは言論の自由に反してしまうため、できないという意見が多く、そのため学校でそういった教育をしっかり行うことを制度化するといった法的処置が考えられるといった意見があがりました。

私は今回の討論を通して、インターネットは人々の生活に多様性を生み出したと思います。You Tubeなど新たな自己表現の場となるような媒体が生まれたり、今までにない人とのつながりを形成できたりする世の中となりました。素早く移り変わるトレンドに一般的な価値観や、法・制度も変化していくことが必要なのではないかと強く感じました。やはり私たちの生活をより豊かに、便利にしてくれるはずのインターネットを、人を傷つける武器に人間がしてはいけないのではないしょうか。(横井裕子)

今回は、NHK解説委員長や、外務省外務報道官を経た後、(株)日本国際放送の社長などを40年近く務められ、現在は東京倶楽部の理事長を務められています高島肇久様にご講演を頂きました。主に、近年発生した様々な国際問題の背景や根底にある問題点などについて、非常に明確にお話し頂きました。 「どうなる世界。どうする日本」というタイトルの下、アラブ諸国の社会問題の根底にある宗教問題、高学歴の若者の職がないという問題、ISが拡大し続ける理由、またメディアと社会問題の関連性など非常に多岐にわたるトピックについてお話し頂きました。

メディアについてのお話では、インターネットの発達により戦争や国際テロの形が大きく時代とともに変化しているという事についてお話しいただきました。特に、ベトナム戦争時代では放送局を介さなければ流せなかった映像が今では誰もが撮影・編集しインターネットに流せ、情報管理の難しさが課題であるという事を強調しておっしゃっていたことが非常に印象に残りメディアと社会の相互関係について非常に学ばせて頂きました。

ディスカッションでは「国際テロの脅威に対して、日本はどのような国際貢献ができるか?」というテーマで非常に活発な討論を行い、国際テロの位置付けをどのようにするのか、また国際貢献とは軍事面・雇用面など様々な面から考える事ができるため多種多様な意見を聞くことができたように思います。(佐藤真名)